■ 12

嫌がって意地で耳から手を離さそうとするもしっかり根本から掴まれているものだからなんともならない。
「バカか。極力会わせないようにしてるだけだ。彼女に会うにはまだこいつには早すぎる。1つ下手をやらかしたらごめんなさいでは済まないんだぞ?」
手が空いてたのでシフォンは包帯を手にすれば少し身を乗り出して手際よく何回か巻いていった。
「そこが売りなんじゃない…。」
フランネルはシュトーレンの後ろの椅子に座る。丁寧に巻いてもらった耳を度々動かしながら二人の間にいるということでテーブルに背中をつけるように体の向きを変えた。
「…にしたって、まだ早い。」
とシフォンが呟きながら、まさか自分のことを言われてるかなんて思ってもないシュトーレンを横目で睨む。
「な、なんだ?俺の顔に何かついてるのか?」
「顔には顔しかついてないよ。」
少々会話も面倒になったシフォンが意味のない雑な返しをする。
「顔に…顔?」
きっと面倒なのはいちいち真に受ける所だろう。シュトーレンがたとえ中身相応の子供だったとしても面倒には変わりない。
「ああ、顔は顔だ。…さて、話は戻るが結局どうしようかな…。正直参加したくないんだが無駄なことはさておき…。」
招待状を見るたびに眉を寄せては軽く唸る。フランネルはいたって落ち着いていた。
「逝きたくなければ行くしかないわ。」
そう言って席について頬杖突いて招待状を眺める。
「仲間はずれすンじゃねえ!」
シュトーレンも疎外感に耐えられずシフォンの手から招待状を抜き取った。自分を置いてすぐそばで勝手に話が進むのが気に入らなかったようだ。
「お前のことを考えてるんだよ!!」
それはあながち本当のことで珍しくシフォンも相手の態度に遺憾した。そんな配慮も気付かず紙切れとにらめっこしていたシュトーレンがえらく真剣な顔になった。




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