■ 10

「あ、はいはい。えーっ…シフォン・ギモーヴ様宛にお手紙が1通届いております。」
きっとただの冗談と気を少し緩ませ肩から提げている皮の鞄から1枚の封筒を手に取り宛名を読み上げる。真っ白の新しい封筒に達筆で書かれてあるが、送り主の名前はない。裏には真っ赤な蝋印が捺されてあった。
「やはり仕事の合間ではないか…。」
という何気ない呟きにおどおどしているエミーリオを無視しながら封筒の上の部分を横に破った。中に入っていたのは真っ黒な紙。
「ん?ああ、血印証明がいるのか。全く…こんなことするのは恐らくあの方ぐらいしかいないな。」
そう言うとシフォンは傍にあったナイフの刃に人差し指を滑らせ、赤い筋の出来た部分を紙の端に押し当てた瞬間、煤が取れるかのように黒が消えて段々と本来の白い便箋が姿を現した。文も浮かび上がる。
「ウチはこれで失礼します!また今度一緒に温泉行きましょう!」
一仕事終えたエミーリオは次の届け先は近いのかそのままの姿で足早に去ってしまった。態度だけは真面目なのだが何かが惜しいと温泉は嫌だと心の中で愚痴りながら文を黙読した。


〜招待状〜

8月16日、夕方刻にハートの城にて第6回クロケー大会を開催する。

持ち物:特に無し
備考:鳥に区分される者はクロケーの参加権は無い(観覧は自由)。

尚、この手紙を読んだ時点で参加は強制となり、万が一いかなる用事であってもこちらを優先し参加を拒否・放置した場合はただちに処刑するものとする。

ローズマリー・B・スカーレット



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