■ 9

「俺が餌付けした鳩じゃねーか!」
シュトーレンが指を差す。主犯がまさかここにいた。しかしもしかしたらシュトーレンの勘違いかもしれない。
「ひえぇ…毎度ごちそうになってます…じゃないってばあぁ!!」
律儀に一礼してからシフォンと餌付け犯を交互に見遣って狼狽する。愚かにも自ら認めてしまった。

「こいつパンが好きなんだぜ」
「え…えっと…どっちかって言うと栗が好きっす…あ、いやその…決して仕事の合間とかはあの…」
どうりでトーストの減りが早いと思った。そしてエミーリオは申し訳なく思ってるのかさりげなく好物をアピールしている。平和のシンボルは天然の気があるらしい。とはいえ自分の食糧が勝手になくなるのはあまりおもしろくはない。

「次同じことをこの場で繰り返した時には…お前が餌になると思え。」
「え…餌ぁ!!?何の!?」
一気に血の気が引いていくエミーリオに対し穏やかな笑みにしては目だけが笑っていないシフォンは明らかに相手の変わり様を見て愉悦に浸っている。空気を読めるならば絶対間に入りたくない。

「…というか、君はまさか本当に餌に釣られてやってきたわけじゃないだろう?」
まるで何事もなかったかのようにいつもと気取った態度で問う。


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テーマ「人外ファンタジー」
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