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そして更に咳払いをしてから
「しゃべれなくても関係ないと思うんだが。」
と返す。むしろ鳩なら鳩らしくいてくれとも言いたかったがそれがさっきの有り様だと考えれば呆れて言うことも出来なかった。
「エミリーよ、情けない。お前もかつて貴族に仕える上級導師だったというのに…今の職になってからすっかりこれか…。」
「エミーリオっす!」
間髪入れず素早く自分の名前を訂正した。ちなみにシフォンは彼の名前を覚える気はあんまりない。

「いやぁ、まあ…ハハハ。ウチには今の方が性にあってるっすから…」
下手でぎこちない作り笑いで(なんとか相手の話題を流そうと)取り繕っていたら今度は隣から自分の袖を掴まれる。
「お前…は…鳩、鳩だったよな!?」
こっちには先程のエミーリオ以上に血の気がすっかり失せて怯えた目で座ったままシュトーレンが見上げている。そりゃあそうだろう。

「そうっすよ!移動には飛ぶ方が断然速いっすからね!」
シュトーレンは淘汰の国に来てからまだ姿を変えることのできる者を見たことがなかった。いずれにせよそう多くはないのでシフォン自体まだそういった者に出会ったのはエミーリオとこのお茶会の少し向こうの海辺をすみかとしている不死鳥のみだ。

「ですけどまー…使い分けが苦手でついついあの姿だと本能のままに行動してしまうっす…。」
だからああも堂々と割り込んで人のこぼした物を啄んでいたのか。だがそれも餌付けでもされない限りは彼にも警戒心はあるだろうと口にせずシフォンは思考する。



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