■ 7
「…せっかく鳩サブレにしようかと思ってたのだが…」
標的を外したはずなのになぜか不適な笑みを浮かべ抜いたナイフをわざとらしくちらつかせる。警戒しているのか肩から降りようとしない。
「ほら、もうなにもしないから。」
片手に刃となり得るものを持ったままで微笑みながらそう言われても誰が信じるだろう、いや、誰も信じない。だが鳩は多分埒が明かないと観念してシュトーレンの肩から足元へと羽をばたつかせ飛び降りた。
地面に着地した瞬間だった。突然、そこで爆発が起こった。
「のわあああぁ!?」
爆発といえど小規模なものにしか過ぎない。炎もなければ白い煙がもうもうと巻き上がるだけだ。にしても肩に鳩が止まったりそこから至近距離で爆発すれば些かシュトーレンはたまったものではなかっただろう。
「な、なんだ…卵も鳩も爆発すんのかよ…!」
「卵?」
シフォンが怪訝そうに訊ねる。それに思わず失敗(しんじつ)を口から漏らしてしまいそうになった矢先。真っ白な煙が次第に空気に消され、そのなかに誰か人影がいた。
「鳩サブレって鳩の形してるだけじゃないっすか!!」
やけに高い声、徐々に鮮明になる。そこには、紺色のスーツと帽子を身につけ、灰色の無造作な髪の青年が顔をたいそうに青ざめさせながら立っていた。
「ていうか本当そういうのやめてください!ウチはまだこの姿で思うようにしゃべれないっすから…。」
涙目で必死に訴える青年。シフォンは無表情だ。
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