■ 4

「…あーあ、台無しじゃん。」
おそらく今の銃声で眠りは覚めかけた上に今の大声で感ずかれただろう、チャンスを逃してしまったチェシャ猫は笑顔は崩さぬまま肩をすくめた。

「いや、僕がいる時点で…」
「遊べこのやろう!!」
シフォンのつっこみの最中にアルマはさぞ嬉しそうに尻尾をせわしなく横に振っては勢いよく立ち上り、地面を蹴ってチェシャ猫に向かって駆け出した。
「やーなこった。」
チェシャ猫は構おうともせず、だが消えようともせずに奥へと逃げる。アルマの眼中は獲物以外は全て風景も同じで、テーブルを勢いよく踏んで上がり地面に着地しては猫を追い森へ消えていった。

「…………」

さっきの衝撃で散らかったテーブル。本来なら怒るべきところなのだろうが、一難去ってくれたことに今は一安心しか出来なかった。再びの静けさに溜め息と共に気を落ち着かせる。

「……やれやれ、やっと行ったか…。」
頬杖ついて冷めた紅茶を一気飲みする。フランネルはまたも夢の中だ。
「…シフォン。耳痛い。」
どたばた煩いと思いきや途端に放置されたシュトーレンが(傷による痛みで)半泣きになってシフォンの向かいの席に座る。片方の耳の先が微妙に血が滲んでいた。
「舐めて。」
「三回死ね。」
真顔ですかさず返す。
「手当てするより舐めた方が早く治ったぞ!」
嘘を嘘だと気付いていないシュトーレンが反論するが相手の方が常識人なのはうっすらとわかっていた。
「それはお前の舐めた所はただの切り傷だからな!」
と言って隣のフランネルを小突いて起こした。


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