プロローグ



───────…

「…全く!危ないったらないわ…」
ようやく静かな森の中を不機嫌そうにぼやいて歩くアリス。今は何もない道でさえ心安らぐ場所だった。



「………ん?」


目の前にはとてつもなく巨大な樹が立っていた。苔は生え、ツルが至る所に巻き付いている。かなり大昔からあったような、年季を感じさせるような荘厳で威圧感のある樹だ。

その真ん中には、本来このような所にあるはずのないもの。大きな扉があった。

「…樹に扉があるなんて…向こうに続いてるのかしら…?」

樹の向こうにも道がある。もし何もなかったら向こうをそのまま通ればいいのだが、道があるのならその先にあるものも気になってしまう。いや、考えてみればまっすぐいけば目的も早く達成できるかもしれない。

「…あまり寄り道ばかりしてたらよくないわ。私、早く帰らないといけないのに。」

そう言ってアリスは樹を通り過ぎ道をまっすぐまっすぐ進んだ。

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