淘汰の国のアリス | ナノ


実はその話をしようと試みたのだが「チェシャ猫だから」としか返してくれなかった。本人も把握出来てないのか。生きてるうえで自分の事を全て把握している人間は少ないし自分もそうだ。だがあんなものを見せられては気にならないはずがない!

アリスは躊躇うことなく

チェシャ猫の尻尾を力いっぱい握ったのだ。


「いぎゃあああああああ!!!」

跳び上がる勢いで悲痛な悲鳴…いや、絶叫を上げた。思わずパッと離した瞬間尻尾を庇った。アリスの手は今頃空間で握り拳を作っているはずだったが、手にはまだ感触が残っている。

「…あ…。」
アリスはしまったと言わんばかりの顔で、チェシャ猫は相当今のがこたえたのか、涙目で歯を食いしばって小刻みに震えていた。
「……ひどいよアリス…油断してた……尻尾はやめて…やめて…」
すっかり尻尾は本人の気分のように垂れ下がっている。さすがのアリスも申し訳なかったのか「ごめんなさい」と表では謝っておきながら「弱点はやっぱり尻尾ね…ふふふ…」と裏でニヤリと笑っていた。



「………ハート、マインド、スピリット」
「……?なあに、それ」
チェシャ猫は急に横文字を羅列した。

「なんとなく思い付いた。さっきの三人見て。」
「…ハートの弱い人達だったけど。」
アリスから言わせてみれば「意気地無し」と言いたかったのだが、あいにくにも猫にそこまで人の言葉の裏を探ることは難しいみたいだ。

「ハートって、心臓のことでしょ?」
「心臓の形をイメージしたらしいわね」
どちらもうろ覚えである。
「でも心臓がハートて言われれば似てないでしょ。」
「…描く時にリアルだったらいやでしょう」
どちらもごもっともである。

「猫はね、ハートていうのは心て意味だと思うの。」
「あながち間違ってはいないわね…」
観念は人それぞれだとアリスは頷いた。




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