淘汰の国のアリス | ナノ





「―――なん……ッ、なんだ、と……!!?」

リーダーが先程の戦意むき出しの勇ましい姿とは反対にわなわなと戦いている。他の男性もそうだ、特に黄色はいまにも逃げ出しそうに後ずさりまでしていた。


アリスも同様だ。

へたりこんだまま、信じられないと言わんばかりの表情で口を開いている。

いや、誰もが信じられないのだ。

なぜなら、今頃見るも無惨な姿で倒れているはずのチェシャ猫が、平然とした顔でかすり傷も服が汚れた様子もなくそのままの体勢で立っていたのだから。

たしかに当たったはずだ、チェシャ猫は身を守るものもないし万が一全部避けたとしても体勢が全く変わっていないのはおかしい。

アリスと三人はしかと見た。



弾はチェシャの身体をそのまま通り抜ける様を



「…ひ、ひえええ!!」
「マグレだマグレ!!弾はまだある!ぶっ放せ!」
うろたえる黄色にリーダーは喝を入れもう替えのライフルをすぐさま構え、合図なしに引っ切り無しに撃った。

「…うーん、うるさいなあー。」

チェシャ猫はやれやれと言いながら、一歩、また一歩とゆっくりと歩み寄った。

勿論、銃は撃ち続けたままだ。だがアリスから見ても弾丸はチェシャ猫の身体をすり抜け向こうの虚空に向かって飛んでいく。まるでそこに何もないように、障害物がなかったかのように。

チェシャ猫がまるでいないように。


「…うわあ来るなあ!」
「猫は君達のお仲間いただきましたー。なんでかって?お腹もぺこぺこで食べるものもなかった所に現れたからでーす。」
リーダーの声なんかなんら聞いてない。ニッコリしながらどんどん距離を詰める。

「ここで質問。君達は普段何を食べてますか?…肉?だよねー。じゃあそれはなんの肉?…なんでもいーや。」

じり、じりと次第に三人との間は目と鼻の先になる。二人は銃を落としせまりくる不気味なそれに震え戦意を喪失していたがリーダーだけは諦めず近づいてくる対象に撃ち続けた。顔には恐怖の色が浮かんでいた。

「んじゃあさ、君達の食べ物にされたソレのお仲間達はどんな思いで毎日過ごしてるかな?」

とうとう、手も触れられる距離だ。弾も尽きたのか何度引き金を引いても銃口から何も飛び出ない。

「し、知るかそんなもの…!!」

最後まで威勢を張るが身体も震え汗でびっしょりのリーダーはそう吐き捨てた。チェシャ猫は笑顔のままだ。




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