「卑怯よ!正義のヒーローみたいなナリして!!」
「…うるさい!これは勇気付けるための服だ!!…それにこれは仇討ちだ…卑怯もクソも関係ないわ!」
そう叫べば三人は一斉に物騒な銃器を構えた。
「正義のヒーローの格好してたらそんな気になれるのかい?」
一方のチェシャ猫は三人を興味深そうに眺めている。
「逃げて!!危ないわ!死んじゃうわよ!!」
アリスは袖を引っ張ってなんとか逃げる気を起こさせようとする。早く射程範囲内から逃げなければ二人もろとも危ないのだ。弾は一つではない、ライフルも一つではない、素人かプロかわからない、運が悪ければどちらも死ぬ。まさかこんなところで死の危険を感じるとは思わなかった!だが決して、一人だけで逃げることはしなかった。そんなアリスが不思議で仕方なかった。
「なんで、出会ったばかりの奴のことなんか心配するの?」
アリスの顔は、涙で崩れていた。
「私、まだまだあなたといっぱいお話したいことがあるの!」
「大丈夫。」
チェシャ猫はそう言って
「猫は簡単には死なないから。」
アリスを突き飛ばした。
「撃てえええ!!!」
リーダーの合図とともに、三つのライフルは容赦なく一方だけを目掛けて夥しい数の弾丸を放った。
「チェシャ猫さっ―――――」
アリスは茂みに埋もれた身体を勢いよく起こして、仇討ちの惨たらしい餌食に遭っているそれに向かって叫んだ。きっともう、彼の耳には決して届くことないだろう名前を、鳴り止まない銃声に掻き消されながら叫んだ。
だが
そこには信じられない光景があった。
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