淘汰の国のアリス | ナノ


チェシャ猫はくるりと身体をひねって一歩、歩み寄っては顔を丸くさせているアリスの顔を覗き込んだ。

「猫なら「お冗談」と聞き間違えた?と聞き返す。けどね」


「………………………。」

しばらく沈黙が続いた。


「……………ぷっ…あは、あははははっ。」


アリスが、吹き出した。今までにないぐらい、一度、笑い出したら止まらなかった。


「あははは、あはははは…なにそれ…お嬢さんとご冗談…ふふ…あははは。」
今度はチェシャ猫がきょとんとしている。こちらはこちらで今まで浮かべたことのない、間の抜けたような表情をしていた。

「……どうしたの?悲しいの?」
アリスは涙目になっていた目を拭いながら息苦しそうだ。しかしその表情は、悲しいというのとはもう反対で。

「い、いや…猫さんて…そんな駄洒落言うんだなって…。最初は変な人かと…。」
「………………。」

呼吸を落ち着かせながらもまだ破顔している。

「悲しくないのに涙を流すなんてヒトはやっぱり変だ。」
チェシャ猫は背を向けて再び歩きだした。何を思ってそう言ったのかはわからない。しかし、雰囲気は幾分和やかになった。少なくともアリスはそう実感しながら後をついていった。


「あ、なんか思い出した」
「…………ふえ!?は、はい!」
アリスは猫好きだ。チェシャ猫といえど猫は猫なので、目の前でゆらゆら揺れる尻尾にいてもたってもいられなず、触りたい衝動に手が今にも尻尾を掴もうと…

「…………………。アリス?」
「なんでもない何を思い出したの!?」
既に尻尾の周りを囲むかのような手を慌てて引っ込めた。チェシャ猫はしばらくその様をじーっと(わざと)眺めていたが、アリスの必死な表情を見兼ねた。





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