「みんな?アリスじゃないヒトもアリスになるってことでしょ。仮にその中にアリスがいたとしても沢山同じのアリスてヒトがいたら君はどのアリスだい?」
「えっ、ええーと…」
一度にこれ程までにアリスを連呼されてはどれが自分(アリス)でどれが他人(アリス)かわからなくなってしまい、一度頭の中で文を区切ってどれがどれでどれなのかを分けた上でようやく自分と他人を把握できた。出来たにしてもそこからどう返していいのかが全くわからない。そんな悩めるアリスとは反対にチェシャ猫は一人楽しそうだ。
「じゃあ、君が今、アリスということを証明してみなよ。猫にもわかるようにね。」
「…うっ…。」
だがもしも飼い猫達も、人間観察しながらそんなことを考えてるかもしれない。チェシャ猫の言うことは、いわば動物の視点から見た素朴な疑問なのかもしれない。答えるべき、なのだが答え(それ)が見つからない。
「でもやっぱり名前しかないわ…みんな私をアリスって呼ぶし…お母様が私につけたんだもん。」
「でもアリスじゃないよ。」
「…今までの私は何だったの…」
また会話が降り出しに戻りそうな嫌な予感しかしないので渋々黙り込んだ。だがその静けさをチェシャ猫ら破る。
「今までの君がアリスだからそう言うけど。」
しばらくためてから続けた。
「名前がないのも不便じゃないよ。」
アリスはきょとんとした。
「…でも、私を指すものがないじゃない。」
するとチェシャ猫は演技ががった大袈裟な素振りをした。
「例えば、先生から名前を呼ばれた、しかし君に名前がなければ、君を呼ぶことはない。」
「…あー…まあそうね…」
だがアリスはふと自分のいた教室風景を思いだした。先生によるが厳しい数学の先生は居眠りしているのと教科書を読んでいるだけの生徒を瞬時に見分け1番の後ろの席までチョークを投げ飛ばす暴君である。そのあとには何事にもなかったように授業を始めるのだ。それを一般化して言った。
「先生はそれぐらいで諦めるような人じゃないわ。私に名前がなかったらきっと「そこのお嬢さん」って…」
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