淘汰の国のアリス | ナノ



「ねえ、猫さん。」
「なんだい?」

しばらく黙って進んでいた(聞きたいことが山ほどあってどれから聞いていいのかわからなかった)がアリスの方はたまらなくなり、どれを聞くかも決めてないのに呼びかけてしまった。

「チェシャ猫ていうのは、あなたの名前よね?」
「まーそう言うんならそうなるんじゃない。」

曖昧にはぐらかされた気もするが、アリスは次に聞きたいことを続けた。

「じゃあ、あなたの種類は?」
「うーん…。」
考え込むチェシャ猫を期待の眼差しで見ていた。どれも既存の動物から成り立っているのなら、彼が何かを把握して調べさえすれば品種がわかる。きっと紫色した猫なんか世界中どこ探したっていないのではなかろうか。アリスは世紀の新しい第一発見者になる。それより生態を知ることができることが何より嬉しいのだ。

「チェシャ猫はチェシャ猫だよ。」
と答えるだけだった。

「…えっと…そうじゃなくて…」

聞き方が曖昧だったのかもしれない。今度は丁寧に尋ねた。

「…その、品種とかあるじゃない。ロシアンブルーとかスコティッシュフォールドとか…」
アリスは自分の中で1番に思いついた種類をあげた。
「ブルーティッシュ?」
「なによそれ…」
「ていうか猫はチェシャ猫だよ。」

としか答えない。

「いや…、もしかしてチェシャ猫て種類の名前なのね!」
「だからチェシャ猫なんだって」

チェシャ猫は薄ら笑みを浮かべたまま全く表情を変えない。しかしアリスはやや苛立ちを覚えている。


「猫は猫だよ。種類があってもそれは猫じゃん」
「…うぐっ…うーん…」
言っていることもあながち間違ってはいないもののなんだか腑に落ちないようだ。




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