淘汰の国のアリス | ナノ


「料理人!これはどういうことなの!?」
その時、突如夫人は料理人にきつく叱り付けた。アリスは訳がわからず手を止めたまた固まっている(もちろんチェシャ猫は料理を黙々と頬張っている)。

「私は…会席料理を用意して…と言ったはずよ…!」
怒りに震える夫人に対し料理人は悪びれる様子もない。
「私ハ確カニ懐石料理ヲ用意シマシタ」

聞いただけでは料理人の言ってることは当たり前といえば当たり前だ。しかしさりげなく「ヒトの言葉ってややこしいね」とチェシャ猫が口を挟んだことから微妙なニュアンスの違いから勘違いしたんだなとアリスはそそくさと平らげてゆく。

「こんなしょぼくれた物…失礼よ!今すぐ下げなさい!」
堪忍袋の緒が切れた料理人は近くにあった包丁を掴み、夫人は身の危機を感じ銃を構え、チェシャ猫は「包丁て刺すものでしょ」とこの一触即発な空気に茶々を入れる。

これはやばい

料理人が包丁を投げようとした。


「お待ちなさい!!!!!」

アリスはたまらなくなりテーブルを両手で叩いた。そこにいた者全員がびっくりして一つの方を見たまま呆然としていた。


「アリス……?」

「………はあぁーー…。」
と一息つけばアリスは二人を見て満足げに微笑む。

「…私は、とても美味しかったな。きっと丹精込めて作っていたのね。…勘違いしたのはいけないことかもしれないけど、気持ちのこもったものに…そんなのあんまり関係ないと思うの。」

「……………。」
料理人は黙って包丁を握っていた手を下ろす。夫人は「で…でもっ」とうろたえるがアリスは咎めもせず満面の笑顔だ。

「それになんだか懐かしい味もした。…また食べに来てもいいかしら!」

「……ふーん。」
チェシャ猫は興味深そうに今の状況を傍観している。夫人もわずかに震える手でアリスの手をしっかりと握り、心から安心したのと嬉しそうな表情で

「ありがとう…!いつでも来てね…待ってるわ…!」

と言った










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