淘汰の国のアリス | ナノ



「あ!…そうよそうだわ!」
夫人は唐突に何か思いだしたように料理人の方へ振り向き言った。
「もうそろそろ出来るでしょう?会席料理を用意しなさい。」

料理人はようやく鍋の中の物を深い器に一つ、また一つとよそい、せわしなくコップを取り出しプレートに乗せて持ち運んできた。

「えっ、なんか申し訳ない…!」
「おっ」
と身を乗り出すチェシャ猫の尻尾を容赦なく掴んだ。力を込めて。案の定猫なのか「いたいっ!!」と悲鳴あげすごすごと引き下がっていった。

「まあまあ!アリスが来るってことは聞いていたから用意していたんだからよかったらこれだけは食べていって。」

そういえばアリスがこの場所を訪れた時から料理人はずっと何かを煮込んでいる。紅茶の件はさておき喉が乾いたままだったし、相手の厚意をそのままスルーすることの方が失礼だ。腹にはまだ空きもあるようなのでお言葉に甘えることにした。


「オマチドウサマ」

とガチャンと音を立ててテーブルに置かれたのは、二人分の綺麗に磨かれた器に具だくさんのシチューと木で出来たスプーン、そして横には陶器のコップにミルクと一切れのフランスパンだった。チェシャ猫用なのか三角チーズと茹でた野菜が一つにまとめて乗せられた皿まである。

「わーおマジ格差社会。」
それでも嬉しそうにチェシャ猫はフォークを突き刺し三角チーズにかぶりつく。やはり猫だ。

「…おいしそー…!」

立ち込める湯気と美味しそうないい臭いにアリスの顔も綻ぶ。空腹より、ようやくまともなものにありつけた嬉しさに心から安堵した。「いただきます!」と一口分すくえばスプーンを口に運んだ瞬間もうアリスの表情は本当に子供のよう!





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