「アリスも…その…猫は好きなの?」
「大好き!」
即答だ。
それを聞いて夫人は安堵の表情を浮かべ、どこか嬉しそうでもある。きっと同志なのだろう。あの時みたいに怯えられてはいい気分もしない。二人の表情も自然になり部屋は穏やかな空間を取り戻した。
「…私はね、三匹も飼ってるの。黒猫のダイナとキティは親子でもう一匹はスノーホワイトって言うの。雌よ!本当にね、雪の様に真っ白なんだから!」
「まあ…まるでどこかのお伽話のお姫様みたいね…」
夫人は童話に出てくる少女を思い浮かべる一方、アリスはお姫様みたいに王冠を頭に乗せ豪華なドレスを身にまといながらネズミを追いかけ回している所を想像して「おかしな話」と呟いている。自身の思考回路がおかしいことを自覚していないから言える台詞だ。すると夫人も自分の飼い猫について話した。
「私はね、飼ったというより拾ったの」
「拾った…?捨てられていたの?」
「多分ね。お買い物の帰りに見つけたの。服もなにもかもボロボロで…同情かよくわからないけど、可哀相とは思ったわ。」
ふと、拾って下さいと書かれた段ボールの中の隅で小さく奮えながら見上げている子猫を想像したがこの国での猫が段ボールき座って震えている姿などわかるはずもなく。
「警戒はしなかった。お腹が空いていたのかしら、エサをやると喜んで食べてくれたわ。案外人懐っこいし、苦労することはなかったの。」
しかし夫人は大きくため息を吐く。
「…やたらとネズミは捕まえてくるし、勝手にどこか行くというか神出鬼没だし、ほんと気まぐれだし…まあ猫だから仕方ないんだけどね…」
アリスも家で遊んでいた時の頃を思い出すと共感したくなるようなことも沢山あるみたいだ。
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