淘汰の国のアリス | ナノ

「お客さん来てるの。」

アリスの座っているソファーの今度は右後ろにそれは立っていた。呑気な少年の声。しかし振り返ったとその時、夫人は「いやあああぁ!!」と顔を真っ赤にして叫びながらお玉を投げつけた。油断していたのかその声の主は「んにゃっ」と小さな悲鳴を上げる。

「アリス見ちゃだめ!」
「投げないってことばに投げないって意味はないの?」
と立て続けに挟んで会話が飛び交った。

「服は!?」
「風呂上がりはいつもこれだよ。」
「見ちゃダメだからねアリス!なんでこんな時間にはいるの!…それにお客さんが来ているのがわかってるならそんな格好でウロウロしないの!はしたないでしょ!すぐ着てきなさい!!エサやらないわよ!!」
夫人の気迫に「はいはい」と言っては足音なくどこかへ行ってしまった。

「……えっと…」
夫人は軽くため息吐くと取り繕うようにニコリと笑った。
「…お、おほほ…いつもあんな感じなのよ…全く…。」

料理人は落ちた破片をちり取りとほうきで黙々とかきあつめているが、顔は不気味な笑顔なままだ。

「…夫人さん猫を飼ってらっしゃるのね!」
「うふふふ…そうよ。」
二人して苦笑いを浮かべている。猫がその程度の容貌で今更アリスが驚くことはないが、恐らく服を着ていなかったのか…それはその姿があだとなった。


「そういえば私も猫を飼ってるんだったわ…」
ふと自分の飼い猫のことが頭の中に蘇る。黒猫の親子と白猫の計三匹でアリスは元々猫が好きで暇な時はしょっちゅうじゃれあって遊んでいたり、手入れも怠ることはなく世話も積極的にと家族で1番可愛がっていた。



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