「………チェシャ猫!!!!!ちょっと出てきなさいッ!!!!!!!!」
アリスが何故か肩をビクッと上げた。同時に、どこかで聞いたその名前の主の仕業なんだとカップが置いてあった場所を見つめる。
「よばれてとびててニャニャニャニャーン…なーんちゃって」
「フライパァン!!!」
夫人のソファーの後ろから誰かがひょっこり顔を出したのを狙っていた夫人は客人が訪れるまでに料理人が投げたのだろうフライパンを手に掴んだ。なんてもを投げていたんだ。フライパァンという掛け声とともに夫人はフライパンでパァンと誰かを全力でぶった。
パァンとは程遠いゴイイィンと幾数倍重い音が響く。
確かに、何かに当たった音はしたのだ。だが、あったのは猫でも杓子でもなく案山子だった!夫人はすぐに今度はアリスの方を振り返った。
アリスは夫人の剣幕にびっくりして固まっている。
「あっつ!あついあつい!猫は猫舌なんだからーもー…」
アリスの後ろから知らない声がしてさすがに振り返ろうとした瞬間、ギリギリ横をナイフが飛んでいく。
顔の色が一気に青ざめた。
「…大丈夫よ、誰にもあてるつもりはないから…!」
獲物を見もせず弾丸を的中させる夫人の腕前を目の当たりにしたものだから信じることは出来るのだが…。しかしナイフは投げて万が一当たったら終わりだ。
「出てこいって言ってるでしょ!!!」
「そんな引っ切りなしに投げられたらみんな会話にならないよ」
「出てきたら…やめるわ!」
短い時間に散らかった部屋にランダムに現れたそれはしばらくしてからようやく一つの場所に姿を現した。
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