淘汰の国のアリス | ナノ

「…………きゃっ」


一瞬何があったか理解できなかったが、円く切り取られたような青空が次第に小さくなってゆくのと地につかない浮遊感…アリスはすぐに察した。だが察した所で落ち着けるわけがない。そう、アリスは今深い深い穴に落ちてる最中なのだから

「きゃああああああああぁぁぁぁああああ!!!」


頭の中はパニックで、ひたすら今の状況を把握出来ずにただ勢いよく落ちていく。落下してからおよそ10秒。普通ならこの短い時間分の高さでもよほど運がよくない限りは死ぬだろう。それどころかまだまだずっと落下し続けている。アリスも既に覚悟していたが死ぬことにたいしての恐怖が一気に込み上げ涙をこぼした。

この穴の向こうには物語のような不思議な世界が待っている。そんなことを期待しながら飛び込んだ穴で絶望した。もはや落ちた先に待っているのは天国だ。やはり絵本は絵本だ。色々と後悔の念が押し寄せてきて空さえ見えなくなった穴の向こうを見つめながらアリスは終わりを待った。

すると、気のせいか知らないが先程の白ウサギの声が自分より下の方から聞こえてきた

「ああもう、何回こんな所通ればいいんだ…」

アリスは確かに白ウサギの声だと、しかも何を言ってるのかもちゃんと聞き取った。勢いよく落ちる中、腕で涙を拭い恐々と白ウサギに話しかけた

「…あ、あの……あなたは白ウサギさんですか?」
「…自ら名乗りもしないで名前を聞くとは無礼だ…ああ、君はアリスだったな。いかにも私が白ウサギだ。」

口調からして厳しそうな印象だが声がわりしていない少年なような声だった。しかも穴に真っ逆さまに落ちているというのに随分と余裕を感じられる。それより何故私の名前をしっているのだろうなど疑問に思うことは沢山あった。



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