淘汰の国のアリス | ナノ

「この紅茶はね…ふふふ、貴方にピッタリかもしれないわ」
「どういうことなのかしら。」
疑問符を浮かべるアリスのカップに添えられた輪切りのレモンを手に取るとそれを「んっ…」と力を入れて搾った。非力なのだろうか。

紅茶はゆらゆらと波紋を立たせ

見る見る内に紅茶は、なんと、透き通るほどの赤茶から綺麗な群青に変わったではないか!

「えええええ!!?」
アリスは黙っているはずがなく、ソファーに膝を立たせれば一気にそれに食いついた。夫人はその反応も想定していたのか深く腰をかけてニコニコ微笑んでいる。

「それは酸性に反応して色が変わるのよ。…せっかくだから味だけではなくこういうのでも楽しんでいただきたかったの。」
まるで深い深い海のように、吸い込まれそうな群青。赤から青に。夫人の粋なはからいに、アリスは先程の警戒心が飛んでいった。

「もちろん、飲めるわよ…うふふ。」
走って走った分喉も渇いたので、しかしそこは上品にゆっくりと風味を味わおうと…


「なーにこれ、インク?」

アリスでも夫人でも、料理人の誰でもない声が空間から聞こえた。

「な、なに…」
「…!?」
夫人は慌てて後ろを見上げる。しかし何もない。

「あ、あら!無くなってる!」
なんといつの間にか、アリスに差し出された紅茶が無くなっていたのだ!

「…………………ッ」
夫人は怒りのあまりぷるぷる震えている。顔は下を俯いてはっきり確認出来ないが、いかにもうかつに近寄れないオーラを放っていた



「ん………んんんんん……ッ」

料理人はこういうときに限って何かを一生懸命煮込んでいる。困惑するアリス、夫人はとうとうここ1番の怒鳴り声を上げた。





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