「料理人!お茶を用意してくれる?」
「え、いやお気遣いなく…!」
そう言うアリスに夫人は穏やかに微笑む。
「客人を持て成すのは当然でしょう?」
遠慮したのもあるが、料理人の「あ?」と言いたそうな不機嫌な顔に下手したらまた何か投げてくるかもしれないと恐怖したからだ。実際料理人は鍋を違う所に置いて食器棚からカップなどを取り出して…
「やっぱり投げたわ!!」
なんと料理人は、夫人めがけておもいっきりカップをぶん投げた。アリスは思わず立ち上がる。一方で夫人は飛んでくるカップに目も向けず、どこからか取り出した銃で撃った!
パァァン
銃声が鳴った直後、カップに見事的中し空中で割れあっけなく地面に落ちた。
「………………………。」
アリスはもはやこの状況を説明してくれる人がいるならすぐさま着て私に納得いくまで話して欲しいとさえ思った。開いた口が塞がらない。しかしなんということか、さっきの騒動もなかったかのようにニコニコしている。
「お見苦しい所見せて申し訳ございませんわ。」
アリスは、今まで変な人物には会ったが「危険な人物」に会ったのは初めてだ。これはパフォーマンスか、どちらの方が危険なのか。出来るならば逃げたい気分だが何かあればこちらを一瞥もしないで撃ってくるかわからない。下手に機嫌を損ねないようにさりげなくここから離れようとか考えていた。
「ドウゾ」
テーブルの真ん中に紅茶の入ったカップが、更にシロップやミルクや簡単な茶菓子と次々と運ばれてきた。なぜ料理人が片言なのかも気になる所だが。
紅茶はゆらゆらと揺れる鏡のようにアリスの不思議そうに覗く顔を映している。カップに注がれたカップには輪切りのレモンが添えてあった。
「あらまあ、気のきくじゃない!」
夫人の顔も小さく映っては揺らぐ。料理人はまたも片言で「ドウイタシマシテ」と言ってキッチンに戻った。
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