淘汰の国のアリス | ナノ


「………………。」
アリスは今まではきっと豪華な料理を乗っけてもらい優雅な晩餐に並んでいた贅沢窮まりない食器だったものを見つめながら呆気に取られている。

ガチャン

「きゃあ!!」
お次は銀色の物体がドアにタックルした。今度はスプーンだ。先ほどの衝撃か綺麗に曲がっている。ドアにぶつかったぐらいで曲がるやわなスプーンなのかドアが尋常じゃないぐらい固いのか、いずれにせよ超能力者も感嘆するほどくの字を描いている。


「こらああああああぁ!!!」

怒鳴り声が部屋に響き渡り、それっきり物が飛んでくることはなかった。

「…来客がお見えになってるでしょう!?貴方の目は節穴なの?」
アリスを指差し、ばっと投げた人物の方を振り向いた。一瞬見た顔はさぞ険しかった。投げた人物は白いコック帽とエプロンから料理人のようだ。不気味な笑顔で鍋を煮込んでいる。はたから見れば魔女が何かを調合している風に見えるが部屋には美味しそうな臭いでいっぱいだ。

「ごめんなさいねー…いつも何かあればこうなの。」
ドアをノックしなかったことを今日ほど後悔した日はない。

「気分を損ねたかしら…とりあえず適当な所でくつろいでちょうだい」
「…はい…」
真ん中にはガラスで出来た丸いテーブルに白いレースのテーブルクロスがかけてあり、その周りをソファーが囲んでいる。窓も大きく日当たりがいい。広い中にはキッチンやベッドも兼ね揃えており、十分ここだけで暮らせそうだ。綺麗に掃除もされている。


アリスはさっきから仕切る人物の向かい側に座った。

淡いピンクのドレスに花をあしらったブローチとさりげなくヘッドドレスを飾っている赤いリボンが映える。亜麻色の髪を後ろで固く結って上品らしさを出し、見るからに気品のある公爵夫人の名に相応しい佇まいだ。

だが夫人とは言うにはまだ若くアリスと同じぐらいの少女だ。そうならば同じ年代に身分がやや高い者同士でもこうも違うとは。






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