「ようこそ!公爵家へ!」
入った瞬間、威勢のいい声が開口一番のアリスを歓迎した。奥にはこれまた大きなドアを指し示すかのように絨毯が敷かれており、絨毯の横に執事やメイドが一列に並んで皆上半身を下げている。何故か皆、頭には犬や猫や羊や魚などリアルな着ぐるみをかぶっていた。
「…は、はあ…」
アリス自身こんなVIPに近い待遇は生まれて初めてだ。一見奇妙な集団ではあるが、満更でもない様子だ。
「悪い気はしないわね!」
しかもこの国に来てからさほどいい扱いを受けてない。少し気分に乗ったのか手を前に、一歩、また一歩とおしとやかに絨毯を歩いた。気付けば蛙執事はいなかったが、このひと時のセレブ感を満喫している最中はどうでもよかった。
「…公爵って、爵位の中で二番に偉いんだっけ…」
住んでいる環境上ではこのようなことも知っていた。だが残念なことに二番に偉いのはコウシャクでも侯爵である。
「…そんな偉い人から招待されて、こんな凄い歓迎されて…」
周りの人の数に言葉には出さなかったものの、緊張感が高まってから色々なことを考えてしまうのだ。
「でも会ってみたいて言われたもの…緊張するなあ…」
とうとうドアの前まで来てしまった。アリスは「失礼のないようにしなきゃ…」と自分に言い聞かせ深い深呼吸をしたら、ついノックするのを忘れて恐る恐るドアを開けた。
「お邪魔しま…」
ヒュンッ
パリイイィン
次にアリスを出迎えてくれたのは、勢いよく飛んできた…
皿だった。
皿は「お待ちしてましたわ!」というぐらいに飛び込んできてドアに全身アタックをかましたとおもいきや派手に砕けて見るも無残に落ちてしまった。
幸いにも少ししかドアを開けてなかったからよかった。もし半分以上開いていたら、今の位置なら確実に後ろに並ぶ誰かには被害がいったはずだ。運が悪ければアリスにも当たっていたかもしれない。
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