淘汰の国のアリス | ナノ

「どうしたの?アリスちゃん?」
「…お姉様、大変。物語からウサギさんが飛び出しちゃったのかしら…」
「…私には何も見えないわよ?」
どうやらロリーナにはウサギの姿が見えないみたいで、アリスが凝視している先を見るが不思議そうに首を傾げるのみだ。アリスはその発言自体が不思議だと思った。むしろこの出会いこそが運命だと感じた。喋るウサギと、それを追いかけたアリスという少女…。そしてしばらく考えた結果、一つの結論が出た。

「もしかしたら、私も物語と同じ世界に行けるかもしれない」

迷わずアリスはウサギを追いかけた。見逃さないよう全力で広い庭を走った。
「アリスちゃん!?」
呼び止めようとするロリーナの声も次第に遠くなり、最終的にはもう耳には届かなくなった。アリスには周りの景色さえ見えてないぐらいウサギを追いかけるのに夢中だった。それでもロリーナはキティを降ろしスカートを引きずりながらアリスを追いかける

「待って!ウサギさん!」
アリスは息を切らしながら走った。そして走りながら「家の庭ってこんなに広かったかしら」とも考えた。それにしてもさっきからちっとも距離が縮まらない。アリスも次第に体力が無くなってきた。諦めたくないという気持ちに体は上手くこたえてくれない悔しさでいっぱいだった。

すると、なぜか追いかけていたはずのウサギの姿がなかったのだ。

アリスはおかしいと思った。アリスはウサギしか見ていなかった、しかも走っている間ずっとだ。そりゃそうだ、ウサギを追いかけていたんだもの。それにあまりにもウサギの足が速いものだから油断していたらどっかに行って見つけられないかもしれない。どうせウサギがチョッキ着て向かう場所なんか皆わからないだろう

それなのにウサギはいなくなった。まさか、アリスが追いかけてるのに気づいて一瞬のうちにどこかに隠れたのだろうか。いや、まず隠れる場所がない。あたりは広い芝生しかないし家や茂みだって一瞬では隠れるには無理だ。アリスは驚きを隠せないまま、ウサギがおよそいなくなった所まで走った

その瞬間

アリスの視界が急に真っ暗になった



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