淘汰の国のアリス | ナノ


「…ひ、ひざ…」
息を切らして苦しそうに呼吸をするアリスの傍らで蛙執事は全く息が上がっていない。

「…蛙だけにケロッとしているわね…」
「実に上手い!!アリス様はやはり我々とは掛け離れたボキャブラリーをお持ちでいらっしゃる!」
駄洒落を拍手をして褒めちぎられても喜べる気分でもない。蛙執事はさすがにアリスの疲弊しているのがわかっている様で、門の前に一歩踏み出しこっちを振り向き微笑んだ(はず)。


「お疲れでしょう!しばしお待ちを…」

そう言うと、蛙執事は門の横に何もないはずの所を押した。すると、目の前の門が重い音とともに前に開いた。その様子をアリスは呆然と見ている。やはりレンガ造りの塀のどこにもボタンらしきものはない。

「すごい!どうやって開いたのかしら…」
「ふふふ…それはアリス様であってもお教えする事は出来ません。ついてきて下さい。」

それはもう丁寧に優しく返されたので深く追求するのが失礼だとさえ考え黙って後に続いた。入ってすぐ傍に花壇があり、色鮮やかな花がささやかに揺れながらも背筋をピンと伸ばして咲いていた。庭の手入れもしっかりされている。二人は石畳の上を歩いた。

「このお庭も貴方がお手入れしているの?」
「私はお屋敷の中の方のお掃除をさせてもらっていただいております故…精々花に水やりぐらいはしますが…」
聞くところによると、他にも数人の従者がいるみたいだ。もしかしたらまた同じように変わった格好でもしているのだろうか。アリスの頭の中はきっと奇妙な群れがいっぱいだ。


「アリス様、こちらです。」
ゆっくり立ち止まり手を広げた方には大きなドアが二人を待ち構えていた。急かすような視線に蛙執事はドアを二、三回ノックした。ドアの向こうからパタパタという足音が聞こえてくる。

「どなたかしら?」
穏やかな少女の声に蛙執事は
「私めでございます!アリス様をお連れしました!」
と声を張った。
「…まあ!アリスがおいでになったわよ!」
それを合図にそしたら急にどたどたとせわしなく走り回る足音が複数になり少女の声も途端に張り詰めた。





「……準備はよろしくてよ。中にお招きなさい。」
「畏まりました!」

蛙執事はドアノブを回し、ゆっくりと開ける。

「さあさあ、どうぞ中へ!」
「…お邪魔します。」
アリスは蛙執事に小さく頭を下げ、開かれたドアの奥へ足を踏み入れた。







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