淘汰の国のアリス | ナノ



「……もしもーし…。」
話しかけづらい様子だったので戸惑いつつそーっと声をかけた。その度「はっ!」と肩を上げてぴたりと立ち止まり、(わかる限り声だけは)嬉しそうに速歩きでこちらに近寄ってきた。

「…な、なんっ」
「貴方に是非会いたいというお方がいまして!もしよかったら…その会っていただけませんか!!」
突然のお誘いにやや戸惑うも、悪い気はしなかった。蛙の頭を除けば今まで出会ってきた中で服装も態度も真面目で誠実で、これはかなりの期待が持てた。

「よろこんで!」
「ありがとうございます!ありがとうございます!では早速参りましょう!!ご主人もお待ちです!」

すると蛙執事はアリスの手をぐっと掴み走り出したのだ。

「きゃああ!ちょっ、ちょっと…!」
腕を勢いよく引っ張られよろめき、足は自然に大股で目の前の人物な必死に追いつこうと駆ける。「どんな人なのかしら…」とそこから後の想像にも気が回らずアリスと蛙執事は森の中の道を颯爽と抜けていった。





******





「アリス様こちらです!」
二人が着いたのは一軒のお屋敷の門の前だった。レンガに挟まれた門はアリスの身丈からして少し高いがっちりとして隙間から入ろうとするのは難しい、が男性であれば簡単によじ登る事は出来てしまう。門の向こうにはそれなりにしっかりとした造りの屋敷があり、二階建てで屋根は赤茶のレンガ、壁は白く塗られている。プランターまでかかってそこから色々な植物が生えていてアリスも「オシャレな家」だと思った。


「……もう、ひ、膝が…」

落ち着いて外観を嗜む余裕すらなかった。






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