淘汰の国のアリス | ナノ


「あー、そうとわかれば私はこのままで何の問題もないのね!…よし、先に進まなくちゃ!」
意気込んだアリスはキノコとキノコの狭い隙間をなんとかくぐってその先の道に出た。
「待て娘よ!!」
去り際に挨拶をしようと後ろを振り向いたら大きな声で呼び止められる。

「そこの近くに小さなのがいくつか生えておる。全て食用で害はない、この先に夫人殿の家があるからついでに届けてやってくれ。」
「え…ええ、わかったわ。」
アリスは巨大なキノコの根本に生えている秋の旬にはピッタリだろう小さく地味な彩りのキノコをポケットに入るだけ沢山むしりつつ尋ねた。
「その夫人どのって人に頼まれてるのー?」
「…い、いちいち聞くでない!」
それに対してなぜか八つ当たりのように返された。アリスは「なんでだろう」と思いながら見事全てもぎ取った。「全部取ったわよー!」と念のために伝えると少ししてからまた返事が返ってきた。

「…随分採りおって…。ひ、一つぐらいはお前にくれてやっても…」
「なーんーてー??」
そりゃそうだ。向こうの方でぼそぼそと言われては聞き取れるはずがない。そうとはわかっていただろうにシグルドは「あーもー煩わしい!!」と雑に頭を掻いて(心の中で)叫んだ。

しかしまあさりげない思いやりも理解してもらえず、諦めては「ならいい!早く行け!!」とアリスに言ったきり頭を抱えて黙り込んだ。

「あんな風に言わなくてもいいのに!」
と(こちらも心の中で)ぼやくも助けてくれた分もあるので「ありがとー!さよならー!!」と遠くにまで聞こえるぐらいの声で、つい自然に手を大きく振って、アリスはまた目の前の道を行き次なる場所へ進んだ。






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