淘汰の国のアリス | ナノ


「そこの娘よ。」

アリスは自分しかいないと思い声のした方に視線を向ける。落ち着いて余裕のありそうな声。見上げた先には、平たいキノコの上に足を組んでパイプを燻らせながらこちらを見下ろす青年の姿があった。派手なファーを巻いているが、全体的に青で統一された服を着ているがモノクロをつけ露出の少ない格好、横にはいくつかの分厚い本から何となく学者かそんなイメージだ。

「は、はい…私に何か用かしら?」
「…いや、これといって用はない。」
アリスはキョトンとしている。

「しかしここまで来たということはこの場所を抜けられると仮定した場合更に向こうへ進みたいのではないかね?」
青年には似合わない口調で尋ねてきた。相変わらずパイプを口にくわえては煙をふかしている。「見た目に似合わないなあ」と心の中で呟いてから言った。

「ええもちろん!ここに来た意味がないもの!」

行きたいものなら行きたい。後戻りしたらもしかするとひどい目に合うかもしれないからだ。でもそう聞かれるぐらいなら何かこの場所を抜けるのに必要な条件でもあるのかと思慮した。

「…ならば、私に挨拶をして自らの名前を名乗るのだ。」

案の定、聞くまでもなく既に相手の次の行動を予想していた。しかも、ただ名前を言って挨拶を交わせばいいのだからこれ程たやすいことはない。

「はじめまして、私の名前はアリス=プレザンス=リデルよ。」
アリスはスカートの端を摘んでお辞儀をした。

「…私はシグルド。芋虫だの言われておるがこの森に住んでいる学者である。お初にお目にかかる。」
一方シグルドと名乗った青年は目を合わせるだけだった。が、もうすっかり慣れていた。

するとアリスは何か大事なことを思い出したのか目を丸くしながら相手を見据えた。

「………芋…虫?」
「…そうだが…。」

突然の態度の変わりように訝しげになるシグルドの返事がアリスの中で確信に変わった。



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -