淘汰の国のアリス | ナノ

「ウサギさんて恐そうな方だから…水が入ったバケツを提げて1時間立ちなさい!ってそれは学校の先生でしょ!」
淋しさのあまり自分で二役作って言い聞かせている。

「…たとえば…そう、にんじん!ウサギといえばにんじんよ!今から制限時間以内に山盛りのにんじん…しかも生を平らげなさいとか…ああ考えただけでゾッとするわ!」

アリスはとにかく、にんじんが苦手だ。

「…にんじんが好きな人でさえ生は厳しいんじゃ…ましてや私が……うえぇ…にんじん…に〜んじん…真〜っ赤なに〜んじ〜ん…んのっ!?」
一人訳わからない歌を口ずさみながら歩いていると突然頭に強い衝撃を受けた。

「…っつつつ…何かにぶつかった…ような…」
赤くなったおでこを抑え後ろによろめくように二歩下がる。独り言に夢中で下ばかり歩いていたせいだ。よく電柱にぶつかるパターンである。

「………?」
目の前には白い柱のような物があった。白い柱ではさっきのケーキ事件を思い出したが、どうもこの柱は薄汚れている。しかもさっきから日陰に入ったみたいに暗い。大きな影がアリスを飲み込む。日のあたるところまで離れてみると、なんと類を見ないぐらいとても大きなキノコだった。それもあちらこちらに沢山生えていた。

「まあ…こんなに大きいキノコなんか初めて…。」

アリスはぽかんと口を開けて見ている。まず驚いたのはやはりその大きさだ。いくら自分が小さくなったところでキノコの大群は圧倒的な威圧感を放っていた。だがアリスが小さくなったせいでそう見えるのはわかっている。よくよく見たらそのキノコはどれもエキセントリックというか、どうも明らかに自ら「食用ではないですよ」と主張するぐらいカラフルだった。

ひどいものには模様まである。キノコがどういうものかわかってさえすれば絶対に手をつけないだろう。まず食欲が全くそそられない。

「…こんなの食べたらどうなるのかしら…」

しかしアリスもしっかりしているので、好奇心に任せて命に危害を及ぼすかもしれないとはっきりわかっている物にはわざわざ触れたりはしない。

「こんなところで何があったって助けてくれるわけないわ。」





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