淘汰の国のアリス | ナノ



おかげで裏の扉から逃げることは出来た。崩壊を続ける足場の悪い階段を降りるのは中々怖かったものだ。家を出た後は裏の茂みに飛び込むようにくぐり、雑踏に不安感を感じながらやがては何も聞こえなくなるほど出来るだけ遠くに走って今に至る。


「……今日ほど走ったことはないわ。」
白ウサギを追いかけ、コーカスレースで走り、危機から逃げ…普段からしてまずこれ程走ったことはまずない。しかも全力、楽しみもなく。そろそろ膝も痛み出し、アリスは片足を引きずりながら歩いた。


「……はぁ〜…にしても…」
自分の手の平を見るとひどく落ち込む。

「…アレは一体なんだったのよ。」
そう、願いが通じたのはいいもののお次はまた小さくなりすぎたと言うのだから先程の事件及び液体を飲み干す前のあの期待はなんだったのか、結局元のサイズ…いや少し前に戻っては何の意味もない。
「…………………………。」
見上げれば幾分と高い針葉樹が辺りを囲み、道はなく今までで1番不気味な森をさまよっていた。


ただ静かで、ただ何もないけど。

恐怖心を煽るには十分だった。


「うう……私ってばれたかな…」
頭の中には崩れゆく家、耳からは引っ切りなしに叫ぶ家の主の声が離れない。
「もしばれてたら…ウサギさん…私を追いかけるのかしら!」
泣きそうな声で呟くもこだますらしない。

「…今度はまさか私がウサギさんに追いかけられるなんて!おかしな話だこと!立場が逆転しちゃったわ!追いかけられる方にしちゃあ確かにたまったもんじゃないわね…!でも私にはそんなに必死になって追いかける理由なんかない…」
喋るのに気をとられ歩いてることを忘れ知らず知らず前へ進んでいく。
「いや!あるわ!だって私ウサギさんについていかないとこの国のこと何もわからないから迷子に………迷子になってるじゃない現在進行形で!!」
アリスはそこそこ勉強出来る方なので、その言葉の意味もどう使えば文がまとまるのかも知っていた。もっとも過去文詞とまでなるとわからないが。

「…あああ…きっと彼は私を血眼で探してるに違いない!見つかったら何されるのかな…?家を直せ、て言うかしら…でも力仕事なんか無理よ…おもちゃに比べて複雑だし…。その前にやっぱり…お仕置きされちゃう!!」
アリスは一気に青ざめた。





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