「多分2階のどこかにある。しっかりしろ。」
「…ごめんなさい。」
後頭部を抑え目をぱちくりさせたアリスを乗せたまま、薄暗い階段をゆっくりのぼった。
「ここね!」
「そーだな。」
廊下にはランプがともされている。階段を上がってすぐ目の前に「ピーターの部屋」という看板がかけてあるドアがあった。すぐ下に貼り紙がある。
「勝手に入ったら許さない」
殴り書きのような堂々とした字で綴られている。
はたして自分達は本当に入って大丈夫なのだろうかというちょっとした不安を感じたが、これは本人から確か命じられたんだ!勘違いしたのも向こうが悪い!と意思疎通をしてドアを開けた。
「ここがウサギさんの部屋か…」
シンプル…というか、ほとんど何もない部屋だった。少し大きなベッドが端にあり隣には机。離れた場所にはクローゼットと本棚。机にこそ電話なり時計なり置いてあったがそれでも本当に寂しい部屋だ。偉そうな奴とはいえ、口調などからしてこれでもお似合いではあるかもしれない。
「これならすぐに見つかりそうね!」
青年は退屈そうに部屋を物色する。アリスは早速手袋を発見した。
「あったあった!アレ!」
一生懸命引っ張ろうとしているのをアルマは片手でつまんで手の平に乗せてあげた。
「さあ早速ウサギさんに渡さないと…」
ふと視界に妙な物が飛び込んできた。
「なにこれ…」
気になったのでアリスは力いっぱい手を伸ばして拾った。水の入ったボトルだ。
「???」
アルマからは小さすぎて確認できない。
「おかしいわ…なんでこんなちっさいのがこんな所にあるわけ?」確かに「今の」アリスが手に握れるサイズ、すなわち普通の人からしては持つどころか飲むことすらままならないはず。そんな物がなぜ、普通の家にあるのだろう。果たして、今のアリスと同じぐらいの誰かが住んでいると言うのか。
→