天井には少し派手なシャングリラが輝きを放っている。カーテンは開けてるがなんせ森の中で日当たりが悪いのでこれぐらいがかえってちょうどいいのかもしれない。
「うわぁ…すごく整理整頓と掃除されてる…。入るのが申し訳なくなってきた…。」
「でも仕方ない。命令された。」
「うん…そうだけど…」
手を伸ばしてテーブルを指でなぞってみる。人差し指は白くならず元の色を保ったままだ。
「なんと!ホコリひとつもない!」
「しゅうとめみたいなこと言うなよ。」
一応姑がどのようなものかと知識だけはあったが、何故それを犬に突っ込まれなくてはならないのかとやり場のない思いをこめ青年を睨む。
「…忘れてた。…俺の名前はアルマ。公爵夫人のペットだった。好きな食べ物はキャベツだ。」
さりげなく言うのでうっかり聞き落としそうだったが、マーシュといいやたらと無駄な付け足して個性を出すものだと感じた。しかもキャベツとはどちらかと言えば犬というよりお前の方が芋虫っぽくないかと心の中でつっこんだ。
「ペットだった?」
「うん。でも赤ちゃんがうるさいし俺をいじめるから家を出た。」
「でもそれじゃあご主人様心配しちゃうわよ?」
「だって、探してくれないし。」
その言葉は何の感情もこもってないように聞こえた。実際ペットを飼って世話をしているご主人様の立場のアリスは複雑な思いだった。
もしも、ペットに気に入らないことをして突然逃げられたらどうしよう。まず自分なら探しにいく。しかし見つからなかったとしたら誰かに拾われない限り最悪な結末を迎えるしかないのだ。野生に戻って生き延びたら人を恐れて攻撃するかもしれない。…中にはこうやって、人にたいして冷めた感情しか持てなくなる。…それはそれで、何と言うかとても悲しいことだろう。
「んのわっ」
深く考えていると後ろから頭を軽くはじかれた。力加減したので痛くはないものの、考えていたことの七割が頭から飛んでいってしまった。
→