淘汰の国のアリス | ナノ

その様子に青年はどうしたものかと感じているだろう。


「あのっ…私…行きたい場所があるんだけど…こんな身体じゃあいつ着くかわからないし…それに危ないし…。」
下を俯き悲しそうな声で言う。青年はまだアリスを怪しく思っているが健気にも見える素振りに若干心が揺らいでもいる。

「…でもお前、犬の尻尾踏んで昼寝の邪魔した。」
「…、そうよね…許してくれないよね…。でも、私…あなたを起こすなんて…できないよ…」
そこでアリスは、放っておけなくなるぐらいの困ったような表情をいっぱいに浮かべ、潤んだ瞳で上目遣いで見つめて手を祈るように握りながら(これほどあざとい態度で)助けを求めた。

「何でもするから私を助けて…っ!!」

「…………………ッ」

青年もこれを見たらもう何も言えなくなった。犬とはもう少し他人の感情に敏感なはずだが内心とは全く裏腹の演技をこなしたアリスの方が一枚上手だったようだ。ちなみにこの技は友人から教わった物で、周囲からやたら余計なものを覚えてくるがまさかこんな所で役に立つとは…。

「本当に何でもする?」
「え…ええ、もちろん!」

その時はその時と適当に考える。

「じゃあ連れてってやる。」
青年は大きな手の平を差し出した。アリスは「ありがとう」と言い手の平の真ん中に乗った。まさしく手乗りサイズである。ちょこんと正座しているその姿はまるでお人形だ。

「場所、教えろ。わからない。」
そっけない聞き方をされても、アリスは偉そうに言えた身分じゃないのは承知している。相手の機嫌を損ねて振り落とされては大変困る。アリスはまっすぐ指を差して言った。



「白ウサギの家よ!」





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