「そうだわ!いいこと思いついちゃった!」
アリスは青年の靴を拳に力をこめて何度も叩いた。
「ねえー!起きてー!起きてよーっ!!」
非力な小人サイズの少女がいくら強く叩いてもポコポコとしか鳴らない。これでは無駄だとわかり、次は服の袖を引っ張ったり噛み付いてみたりもしたがわずかに耳が動く程度で全く起きる気配がない。
「む〜っ…どうしたらいいのかしら…。」
腕を組み真剣に悩んでいると、微かに地面を何かが撫でる音がした。尻尾がわずかに動いたのだ。
「もう…私ったらおばかさんね!彼も動物じゃない!」
それを見て閃いたのかアリスは自信たっぷりの笑顔でじりじりと近寄る。
「よくダイナにも怒られたもん…だいたいの動物は嫌がるはずよ…。ふふふ…。」
尻尾の真ん前に立ち止まりゆっくりと片足を上げた。
「アナタ達の敏感な所は……」
「ここなんでしょう!!!」
と気合いの掛け声とともに、全部の重心を込めて、尻尾をおもいっきり踏んだ。
「キャイン!!!!?」
青年は甲高い、見た目には似合わない犬らしい悲鳴を案の定上げた。アリスが(なぜか)勝ち誇ったような表情で、涙目でキョロキョロしている青年をじっと見上げた。でもサイズがあまりにも小さいので一向に気づいてもらえるはずもない。アリスにとっては起きてくれただけでも成功なのだ。
「犬さん!犬さん!」
と視界に入りそうな距離まで下がりジャンプしたりして叫ぶとビクビクしながらアリスの方を見た。
「お前が、踏んだのか…?」
「ごめんなさい…。ついうっかり…」
もちろん嘘だが。
「…犬は、尻尾が弱いんだからな…気をつけろよ…!」
「ええ、二度と踏まないようにするわ!…それはそうと…」
苛立ち気味の青年はじっと睨んでいる。気持ちいいお昼寝タイムをとんでもない形で邪魔されたものだからそうなるのは当たり前だ。一方どアリスは急にもじもじし始めた。
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