淘汰の国のアリス | ナノ

「………………」
ジョーカーは回転式のシンプルな椅子の背もたれの下を腿で挟み後ろ向きに座りながら、走馬鏡にぼんやり映る光景をながめて笑顔をひきつらせていた。右手にはシュークリーム、頬にはクリームがついているなど、一度客人が去ればこの有り様だ。

「…おおよそ目処はついていたとしても、シフォンもまーえげつない事をする。おー怖い怖い。うかつに怒らせてはなるまい…。それはさておき妙に引っ掛かる」
残りのシュークリームを一口で軽く平らげて顔には今度は真剣みを帯びていた。

「なぜアリスの姉で一番彼女の側にいたロリーナは「アリスを心配していた」んだ?…アリスがいなかった時に起こったことも全て記憶にはないはずなんだが…」

そんな一人考察を始めかけていた所に。本棚と本棚で挟んだ廊下から一人のメイド服を着た少女がやってきた。おかっぱ頭の黒髪、東洋人を思わせる容姿だ。
「御主人様〜。お茶が入りましたよ〜」
間延びした口調とおっとりとした雰囲気の少女は主人であるジョーカーの机にプレートの三つの紅茶の入ったカップを置いた。

「ああ、ルジェか。これから来る客人のために…すまないね。」
座る態勢を本来の正常な形に、片足でくるりと椅子を正面に向けた。
「あらやだ」
上品な含み笑いそう返し、エプロンのポケットからハンドタオルを取り出して主人の口許を優しく吹いて上げながら
「御主人が私達の労をねぎらってくださらないから、これは自分達へのご褒美ですわ。」
さりげなくきつい言葉を吐いた。あながちその通りでもあった。厳しいのではなく放置していただけなのだが。

「んっ、悪かったな。…だがもてなしの方はきちんとやらないと…」
図星のジョーカーはちょっとだけ膨れっ面をしていた。対してルジェはそれほど気にもしていない様子だった。
「だ〜いじょ〜うぶですわ。そこはちゃあんとノアちゃんが…」





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