淘汰の国のアリス | ナノ

それだけを告げに来たのか切り上げ話の発端者でありお茶会の主催者はその場を立ち去ろうとした。

「待てよ!俺にとっての居場所はここなのに…!」
必死に呼び止める言葉が背中と、心に刺さる。それでもシフォンは振り返らない。わかっている。確かにここはレイチェルの敷地内だがそういう簡単な事を言ってるのではないと。
「居場所は与えてもらうものではない、自分で見つけるものだ」
別れのときにしては冷たい言葉もシフォンなりの精一杯だった。一歩、前に踏み出そうとする。
「…つれないわね。私たちはその程度だったの?」
足が止まる。フランネルはゆっくりとレイチェルの隣に歩み寄る。小さな背中を睨みながら。
「…僕は君達のこと思って」
「お役御免になったら私たちはあかの他人なの?」
フランネルがシフォンがまだ何か続けようとしたのを感情を押し殺した低い声で遮る。耐えられずシフォンは振り返った。酷く焦った顔で。
「そんなわけないじゃないか!」

急な変わりようにレイチェルが目を丸くする。一番見たくない面子だというのに。
「…でも、だからこそ…君達には…やっぱり自分の選ぶ道を…その…」
広い帽子の鍔で顔を隠す。こんなときに、素直な言葉さえ見つからない。ここから別れるタイミングも掴めない。

本当は一緒にいたい

でもそれとこれとは別だから

とずっと言い聞かせていた矢先だった。

「なあ、俺達は自由にしていいんだよな?」
提案か質問かわからないレイチェルの問いを後者として受け止めながらまだ何かを期待しつつシフォンは顔を上げた。
「あ…あぁ。」
それを聞くとレイチェルは満面の笑みに顔を綻ばせながら言った。

「じゃあ俺、一生お前についていくから!」

今度はシフォンの方が拍子抜けした顔で向こうを見る。
「居場所は作るものなんでしょう?なら、三人で作っていこうよ…これは、私達が選んだ自由よ。」

期待していた。「さようなら」を。いや、そんなまさか。意外だった。でも、それを振りきるほどできた人間ではなかった。

「…な?いいだろ?」
とどめのレイチェルの問いかけにシフォンは

「………そうだね。行こう、皆で。…ありがとう、大好きだ。」
初めて素直に、「幸せ」を共有することのできた嬉しさは涙として、慌てて袖で拭ったけど彼の表情もまた満ちているように見えた。



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