淘汰の国のアリス | ナノ





「なんで!?こんなはずでは…!」
どことは断定できない追々と背の高い樹がひっきりなしに立ち並ぶ暗い深い森の中、一人の少年、ピーターが一本の樹に悔しそうに拳をぶつけていた。服から覗く部分は包帯で巻かれている。

「…どうして、アリスは帰ったんだ?アリスは…この僕が完全に「隔離」したはずなのに…!!これでアリスはずっと、この国に…」
「会いたかったよ、白兎!」
その後ろ、かなり気取った様子のシフォンが気配もなく立っていた。ピーターは振り向こうとはしない。虫の居所が悪いのか。

「…貴様か、僕の邪魔をしたのは…」
怒りに満ちた声にシフォンは取り繕った笑顔でにっこり微笑んだ。
「邪魔なんてとんでもない!僕は彼女の望みを叶えたまでさ。」
「…馬鹿な!皆はアリスにいてほしいと思っている…お前もそうだろう!?アリスだってここにいたいと…」
激昂するピーターは振り向いたが黙りこむ。喉元の一寸先にステッキを突き立てられる。
「盲目だな。君達が幸せなら彼女の幸せはどうでもいいのかい。」
その笑顔に恐怖を感じたのは目が笑っていなかっただけではないかもしれない。
「彼女の幸せこそ、僕の幸せ。君の行いは僕からしたら「ただのエゴ」だ。…さて」

一旦ステッキをさげるがピーターはなぜか、樹を背中に動くことができなかった。シフォンは構わず続ける。
「かくゆう僕もエゴイストなのかもね。でも「僕達のアリス」を「殺した」罪は大きいよ。だから個人的な気分も含め君にお仕置きを与えよう」

シフォンの笑みは消えない。ピーターは蛇に睨まれたなんとやらか、体が震える。いや、彼ならいざこういうときにこそ動じず隙があるなら逃げれたものだ。「動こうにも動けないのだ」。金縛りみたいに。
「僕は…物語はハッピーエンドで終わらないと納得いかなくてね。」

「…わ、悪者を懲罰して迎える終わりがハッピーエンドだと言うのか!」
声まで震える。それはもう狙う側にとって隙も同じ。シフォンはにっこり笑ってこう言った。


「アンハッピーエンド、なんつってね」
黒く嫌な光を放つステッキを目の前の罪人目掛けて勢いよく降り下ろしたー…









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