淘汰の国のアリス | ナノ

アリスは下を俯きながらとぼとぼと歩く。本来なら一本ですむ距離を何十歩もかけて歩いていた。最初は圧倒的な世界の違いに驚くも、特にめぼしいものもなく、考えることがないからっぽの頭の中ではついさっきのケーキの嘆きがぐるぐる回っている。

「あのあと…食べかけなんか、誰も食べないわよね…。」
いずれにせよこんな小ささじゃああんな太い柱をよじ登ることはできない。でもどうも諦めきれず、落ち込みながら広い地面を一人進んだ。

道の途中、木陰にもたれて座っている人を見つけた。無視して通りすぎようとしたが、アリスにとっては藁にも縋りたい気持ちだった。ただでさえ遠い所をこのままではいつになったらつくのかと考えたら絶望しかしない。道の真ん中を歩いていたアリスは小走りで駆け寄った。


アリスの身体はその人の靴より少し高いぐらいの小ささだ。目を引いたのは、大きな毛長い塊で顔をうずめたらさぞかし気持ち良さそうだ。毛並みもいい。一歩ほど下がって見上げた。ワイシャツに布の長いズボンに革靴。シンプルを極めたどころかやや貧乏臭さも感じられる。深い緑色のウェーブがかった髪に茶色のメッシュが入っており、尻尾同様に頭から長い耳が垂れている。こちらは犬のようだ。

気持ちよさそうにうたた寝をしていた。清々しい青空、寒いとも暑いとも言えない穏やかな気温、これは最高のお昼寝日和ともいえよう。自分もこれぐらいの天気にはよく猫を連れて芝生に寝そべっていた。

「ふぁ〜あ…私も眠くなってきた…。」
ケーキも結構の量を食べた後でこの天気だ。激しい運動もしたため身体は疲弊している。

しかしうっかり寝てしまっては危ない。寝ている自分に気付かずうっかり踏んでしまうかもしれないからだ。元の大きさに戻る方法を見つけるのが先決だが、より安全な場所を探さなくてはならない。

まず、そこまでたどり着けるか否か。





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