淘汰の国のアリス | ナノ

―…―…―……


「アリスちゃん!!」

しばらく途切れていた意識はロリーナの自分の名前を必死に呼ぶ声で朧気ながら徐々に覚めていった。

「…お、お姉さま…?」
いつのまにか眠っていたのかもしれない。確か、ロリーナの手持ちの中から一冊手に取った本を読んでいるうちに次第に文字の羅列が眠気に誘ったのだろう。…にしては随分永い眠りについていたような気がするが。それにしたら空はまだ真昼のようだ。きっとうたた寝程度だったんだ。なんてことをぼーっと考えていた。その時だ。

「アリスちゃん…おかえりなさい…やっぱり、帰ってくるって信じてた…!」
突然何を思ったかロリーナが強くアリスを抱き締めた。
「お姉さま!?何をおっしゃってるの?」
意識もはっきりとしたアリスは戸惑いの表情のまま身動きはとれず頭のなかは混乱した。なりふり構わずとはいかず、アリスの動揺に気づいたロリーナがぱっと体を離す。
「あ、あらごめんなさい。なんでもないわ…」
ロリーナは涙を端にためていて頬もやや紅潮している、嬉しそうな微笑だった。それがアリスにはさっぱりわけがわからずより一層混乱した。
「どうしたの?」
「本当になんでもないの。」
アリスの問いかけにロリーナは何事もなかったかのように笑い流す。

「おーい!アリス、ロリーナ!!」
玄関の扉を開けて父が大きな声でこちらに向けて名前を呼んでいる。
「いまから買い物に行くがどうするんだー!?」
ロリーナは積まれた本を両手に抱えて立ち上がり急いで駆け寄った。
「今いくわ!アリスちゃんも早く!一緒に行きましょう!」
「う…うんっ」
アリスもとりあえず、腰をあげて姉の背中を追いかけて走った。



「……………?」
アリスがふと立ち止まり後ろを振り向く。
「アリスちゃん?」
自分を追いかける足音が消えたのに違和感を感じ同じようにアリスの方を振り向いた。

「…気のせいかしら?今、何か白いものが…」
不思議そうに呟くアリス。しかし、その先には一面の青々と広がる芝生しかない。ロリーナは小さく笑った。
「きっと野良猫よ。ほら、急ぎましょう」
「ええ、お姉さま」


一人の少女は少しも気に止めることなく、小走りで家族のもとへ帰っていったのだった。






―fin―



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