淘汰の国のアリス | ナノ

アリスは最初こそ驚いた。でも抵抗も何もしないのはおそらくこれが何度目かなのと、それと頭を撫でる手と背中に触れる腕に優しさを感じたからなのと、何故か懐かしさも覚えたからだ。

「大丈夫、僕達はまた逢えるよ。」
聞いたことのない優しい声。ずっと聞いていたくなるような、でもその声でそんなことをずっと聞いたらもう戻りたくなくなりそうだ。
「…ほんとに…?また、あえるの…?」
自身も、この時が甘えを帯びた声にさせた。涙はもう、箍を外れて彼の服を濡らしている。押さえられた顔では彼の顔も見えないが、なんとなく見える気がした。きっと、変わらず笑っている。

「世界は繋がっている。もし、また白い兎を見かけることがあったら迷わず追いかけておいで。…僕達も、絶対に忘れない。いつだって歓迎するさ。」

こんな場面でこそ体裁ぶって、言い繕うて、紳士のふりをしている気取って。だとしてもそれはシフォンにとっても所詮はかき集めたにしか過ぎない精一杯の短い別れの言葉だとしたら、誰が彼を「気取り屋」だと笑うのだろうか。

アリスは笑っていた。嬉笑いだ。

そこの人でなしも笑っていた。いつも通りだ。

「ラブロマンスはうんざりだねぇ!」
そう声を張ったジョーカーの側の大きな大きな時計は普通よりやや速く回っていまや3時。また過ぎてゆく!
「もうお別れの言葉は交わしたろ?時間がない、早く」
シフォンが彼女から離れる。まだ何か言いたそうなアリス。時間は4時。

「…私、帰らなきゃ。」
アリスはまだ彼を向いたまま巨大な時計の方へと数歩距離を取る。寂しそうな笑顔、でも満足げでもあった。
「皆さん、お元気で。他の方にも伝えておいてくださるかしら?」
のアリスの言葉に
「ああ、承知した。」
と、シフォンは返し
「元気でね。」
と、ジョーカーは答えた。なんだか微妙に二人は似ているなと思えてきてしまう。時間は5時を切る。






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