淘汰の国のアリス | ナノ

そして彼の言う走馬鏡というものに、ぼんやりと浮かんできたのは三つの長さの違う針と円になって12までの数字が記されたもの、つまり鏡がまるで1つの大きな時計になったのだ。しかしいつの間にやら液晶らしきへだてていたものがなくなっていた。

「こんなに沢山時計があるのに…」
大きさからしてひとしきり存在感はあるから目がいくものの周りは違い互いの針の音と歯車の音が混ざって耳が不規則なリズムに冒されている。
「私もこれを通して世界へ飛ばすのは初めてなもんでね。この時計の針が6時を指すまでに飛び込むんだ」
針はまだどれも一番上の数字を真っ直ぐ指したまま動こうとしない。きっとこれもジョーカーの合図ひとつで作動したりするのだろう、とアリスは考えた。同時に物理的なことも。
「…でも、ぶつかっちゃう…」
「大丈夫。」
ジョーカーの表情に隙を見たことはなかったものの更に増して自信に満ちていた。一応言うには今から行うことは初めてなのだが確信は一体どこにあるのか。
「この国で今更気にすることかね」
「………?」
肝心な時には言葉少なく、アリスは首を傾げる。だが周りに流された。
「6時を過ぎればこれはもはやただのありふれた物体と同じ。それまではただの通過点となってくれているよ。」
そこでなんとなく察した。アリスもこれまで淘汰の国で散々不条理な目に遭ってきた。体が一気に縮んだりしたのがいい例だ。でもこの空間に来るほんの前からは魔法が主体の違う国に迷いこんだみたいに思えたが。





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