淘汰の国のアリス | ナノ

ジョーカーはアリス達の側から離れた。そして濁ったレンズに手をかざす。
「これは走馬灯ならぬ走馬鏡といってだね、他人の過去を映し出すことも可能である。そう、つまり…」
繕うた笑顔で振り返る。
「君には…そうだな。この国に来る「きっかけ」と遭遇する前を思い出してほしい」
少し落ち着いてきた涙を袖で時たま拭いつつアリスはたどたどしく自分に問いかけた。
「きっ…かけ?」
遭遇するという言い方がひっかかった。
「アリスはどうしてここへ来たんだい?」
「え…?」
空いた隣には、いつからか(アリスが気付いていなかっただけである)そこにいたシフォンが彼女に問う。かなり簡単な質問がアリスには難解に感じる。だが、冷静に記憶を巻き戻してみれば案外すぐに見つかった。

「…庭を…しろい…うさぎ…そうよ!白兎!」
しかしそれではまだダメとすぐに気付いた。
「その前は確か、お姉さまの本を読んでたわ。名前は…」
「結構」
また何か言いたそうにしているアリスはジョーカーに半ばで終わらされてしまう。

「そこまで思い出せたなら十分だ。…いいかい、アリス。今から世界と世界を繋ぐ扉を開ける。」
彼の言葉が合図みたいに、その走馬鏡の奥の方から歯車が歪に動き出す音が鳴り始めた。





「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -