淘汰の国のアリス | ナノ

「いただきます!」

と大胆にフォークを突き刺す。…恐る恐る反応を伺うも何も言い返さないので安心して一口大を頬張った。

「……っおいし〜!」

子供のような満足げな笑顔で心の底からに嬉しそうに言った。やはり甘い物は誰の心をも奪うものだ。その後も遠慮なく次々とケーキを口に入れる。
「こんなでっかいのを独り占めなんて初めて!家では絶対有り得ない!ん〜っ…ほっぺた落ちちゃいそう!ふはいほう(最高)!」
と言うと手を止め口の中のを飲み込んだ。
「さすがにはしたないわ…。ほっぺた落ちたら食べれないんじゃあ………。」
だがそれもつかの間。再び手を動かし食べ続けた。
「舌があれば味はわかるからいいわ…ッ、痛ッ!!」
頬いっぱいに詰めこれほどにない幸福感に満たされながら食べていると、突然頭に激痛が走りその場にゆっくり崩れてしまった。何がなんだかわからずただ頭を抱えて苦痛に顔を歪ませる。
「う…あぅ………痛い…っ」

しかし、数秒もするとその痛みもなくなっていった。
「……あれ?……なんだったのよもう……。」
と疲れた表情を浮かべながら立ち上がった。

「………………ん!?」

顔をあげればそこはまるで別世界のようになっていた。所々にやや大きな岩場があり、身丈より遥かに高い葉が生い茂っている。目の前には太い白い柱が佇んでいた。今倒れた瞬間に世界が変わったのか、アリスは混乱した。

「え、えっ?何が…起こったって言うの!?」
すぐ横には金属の物体が転がっている。よく見ればコレはさっきアリスの手の中にあったフォークではないか!今やただの巨大な金属の塊にしか見えない。アリスはなんとなく状況を理解した。

「世界は変わってない…何も…。………私がちっちゃくなったのよ!!!」

そう、この景色だって変わっていない。落ちていたフォークとテーブルの脚が証明している。なによりアリスがすぐ前に見た物だからだ。だとしてもアリスにしては謎でしかない。なぜ身体が縮んでしまったのか。

「あのケーキを食べたから…なの?」
見上げてもテーブルの裏しか見えない。一方ケーキはその上で嘆いていた。

「やっぱり!やっぱりあなたもそうなのね!私を最後まで完食してくれた人は一人もいない!なぜ!なぜなの!?いつもそう!腐って捨てられるか食べられても残されて捨てられるる…食べられないケーキはケーキじゃないわ!」

きっとケーキ自体は自分に何が入っているか全部は知らないだろうし、今の台詞からしたら自分はそういうつもりはなくただ最後まで食べて貰いたいだけだと同情するもこんな姿にさせられて黙ってはいられない。

「だって…こんなんになったら…食べることができないじゃない…っ!!」
と、どうしようもできない悔しさと悲しさに涙をぐっと堪えながら吐き捨てるように言ってその場を走って後にした。







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