淘汰の国のアリス | ナノ

あっさりスルーされたシフォンはわざとらしく咳払いをする。
「…むしろそのままだと君の顔を見なくてすむが、君とずっと一緒は狂気の沙汰だよ」
「狂喜…ねぇ。」
名残惜しそうに熱い抱擁を解く。アリスの心臓は動揺で速い鼓動を刻む。

「さてさて。せっかく我等がアリスが来てくれたから談話でもしたかったのだが…事は一刻を急いでいる。出来るだけ早く時の歪みを修復しないと…」
長々とジョーカーが話す間に落ち着きを取り戻したアリスは彼の大袈裟で演技かかった仕草をきょとんと見ていた。そういえばジャックとジョーカー…名前も似ているがどこか雰囲気も似ている気がした。

「…っとその前に!」
ぐんっと満面の笑顔を近づける。アリスはびっくりして一歩後ずさりをした。
「私の名前はお馴染み、ジョーカー。顔は酷似だが性別は紳士。職は時計屋でまたは創造者(マッドストーリーテラー)。人呼んで、だけどね。」
とだけ言ってくるりと背を向ける。
「もう会うことはないだろうが得体も知らないままでは気味が悪いだろう。」
今でも十分「きみ」が悪いが。
…とも口にはしなかった。

「私はここで普段、アリスが隔離された瞬間から「とある事象」に至るまでの時の流れが並行に進まないようにしている。」
言い回しがかすかにややこしいものの、要はアリスがこの国にいる間の彼女らのいた世界の時間を止めるのが彼の仕事だということとアリスは解釈した。






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