淘汰の国のアリス | ナノ


アリスのいた世界でも動物が喋る事は躾によっては不可能ではないし、現にこの国で喋る動物(大部分は人の姿)にも出会った。だがまず、喋る食べ物なんて物理的に考えて有り得ない。これも、やはり不思議の国だからなのか。難しい顔をする

「…この国ではケーキも喋るのね!でも食べ物がいちいち喋ったら食べるときはたまったものじゃないわ!」
ケーキはだんまりを決めているのでまた独り言みたいになっている。

「スープとか熱いものは「冷めるから私から食べて!」とかお魚だったら「骨も残さないで」とか…デザートは「なんでいつも最後なんだよ…」て愚痴ったりして…。でも私にんじん苦手だからにんじんはきっと嫌われ口叩かれそうで嫌だわ。シチューとかでもついつい残しちゃうの…。そしたらきっと「俺を残すなんてもったいな…」
「おだまり!!」
アリスはまた我に返った。このようなことを何度か繰り返しているような感じもするがついつい考えながら話すとそれに夢中になってしまうのはアリスの悪い癖でたまに姉に注意されることもある。

「あなたの話なんか聞いちゃいないよ!私は食べた人のもんだから早く食べてよ!」
アリスはその言い方にむっとした。腰に手をあてびしっと指を差した。ちなみにこれは叱りつける時の母の真似である。

「人にものを頼む態度がそれですか!?」
するとケーキはその気迫に怯み「ひえええ」と弱気な声を吐いた。
「ごめんなさい食べて下さいませ!」
「それでよし!………………でも一つ聞いていいかしら?」
ケーキは動くことはできたらきっと小首でも傾げていることだろう。
「食べられてる時って痛くないの?悲鳴とかあげられたらいい心地しないわよ。」
それを聞いてケーキはクスクスと笑った。

「食べられる私が痛みを感じてどうすんのよ。遠慮せず頂いてちょうだい。味は保証するから。」食べ物にそんなことを言われると違和感を感じる。

「残さず、全部食べてね?」
「うぐっ………うーん……。わかったわ!」
少食ではないがこの大きさは一人で食べるには厳しい。だがこんな森の中、もしかしたら誰にも食べられず腐ってしまうのは悲しいので、アリスは時間をかけたら全部入るだろうとフォークを握った。実は会話している途中も食べたくて仕方がなかった。もう頭の中には白兎のこともテーブルマナーも何もない。






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