淘汰の国のアリス | ナノ



アリスの頭の中に大量の映像がかわるがわる流れ込んだ。訳もわからず時計を見つめながら記憶のようなそれは瞳に焼き付いて剥がれない。

「…何…なんなのこれ…」
それらは全く見に覚えのない映像ばかりだった…いや、違う。見に覚えのないのは確かだが全く作られた物ではない。そう、それが何故ならば最初に見た光景はアリスが穴に落ちたあの場所の景色そのまんまだったのだから!

「………え?」
わずかながら走馬灯かと思ったがそれも違った。次に流れ込んだのは自分が穴に落ち続ける場面でもなければ本来止まっている時間内のロリーナでもない。「たいして深くもない」穴の底に横たわる自分の姿とそれを見て泣き叫ぶロリーナと、あわてて駆けつけた家族のあわてふためく場面だった。

「嘘よ…私は…ここにいるじゃない」
そう言ってから止めどなく次々に映像が流れ込む。

あ穴から拾われるアリスは何度体を揺さぶられても起きようとしない、家族や医者の懸命な処置でもびくともしない。頭には血が、打ち所が悪かったのか。
映像は断片的に変わる。次は、少し大きめの箱に沢山の花に包まれて静かに仰向けで眠っている自分の姿。お気に入りの絵本やおもちゃもある。この箱は、なんだろうか。
「いや。まって」
更に、お墓の映像。家族が喪服を着て、ひたすらに誰かの死を、悼んでいる。誰かとは誰だ。

「私は…ねえ、気付いて!私は死んでなんかないッ!」
アリスは必死に叫び続けた。しかし、無惨にもお墓に彫られてあった主の名前は…


―アリス・プレザンス・リデル―

「いや、いやだ…私は…私は…!あ、あぁ、うっ…熱い…熱いよぉ」
アリスは何の前触れもなく、体を襲ってきた業火の炎に燻られるような熱さに身悶えした。
「…お、おね、お姉さまっ、あ、あああああぁ!!!」
「アリス!!!」
彼女の突飛すぎる容態の変化に駆けつけたシフォンがわずかにはっきりした意識の中で霞んで見えた。だがアリスは耐えられず、彼の腕の中で気を失って倒れた。





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