淘汰の国のアリス | ナノ

「命令です!ピーターの処刑はなかったことにします!!彼を至急手当しなさい!」
「はっ…しかし…」
目が合った兵士がはっとして背中を伸ばす。はっきり聞き取れなかったらしい。以前にいきなり就いたばかりの女王からの命令を下され少々戸惑っていた。だが、構わずアリスは続けた。
「命令が聞けないんですか!?さもなくば首をちょんぎっちゃいますよ!!?」
そう言ったきり兵士がきびきびと二人ほど前に出てすっかり動けなくなったピーターの腕を肩に回して運んでいった。敬語なのはアリスに接してきた大人がよくしかりつけるときの態度を真似たもの。首をちょんぎっちゃいますよと言ったのもその一言で兵士を動かしてきたと思い付いたからだ。当然、彼女にそんなつもりはない。側にあった鎌が脅しているように彼には見えたに違いない。

「……えっと、どうしよう」

困ったのは、チェシャ猫とローズマリーの亡骸の処分。アリスもこれらを見ると強がっていられずまたまた涙が溢れそうになった。だけどいつまでもこんなままではいられない。せめて、女王らしくないと。考えてみるもこういう状況におかれた事がないためすぐにどうしていいか浮かばなかった。

「……あら?」
ふと金色に光る物体が視界に飛び込む。アリスは気になりその物体を拾った。
「これは…懐中時計ね。兎さんのだわ、きっと」
ピーターが何らかの拍子で落としたのだろうと推測したアリスは、呼び戻すのもあれだからと届けに行こうとした時だった。時計の針が急にかなりの速さで逆回りし始めたのだ。
「まあ、おかしな時計だこと!」
まるでアリスが手に取った瞬間に回り始めたような。一周、二周、何周も普通とは何倍もの速さでぐるぐると回り続ける。
「私が、壊したのかしら…」
どうあれ一度はピーターの家を大破壊してしまったアリスは自分に自信がなくなっていた。





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