淘汰の国のアリス | ナノ


アリスは茂みをくぐり抜け森の中の道をとぼとぼと歩く。また白ウサギを見失った上に今度は先程とは違い周りが木々だらけで暗い森の中をたった一人で歩いてるものだから退屈で仕方ない。不思議の国…いや、淘汰の国に着いてからろくなことがない。コーカスレースとやらも結局はなんだったのか。もう少しルールをきちんとしていれば楽しめたのかもしれない。
「そういえばネズミさんは今頃どしてるのかしら。…きっと皆に囲まれて土下座でもしているに違いないわ!」

自分をかばって司会を受けてくれたというの可哀相な気もするが、ああなったのは自分のせいではないと言い聞かせそのまま歩いた。


「あら、アレは何かしら…。」
道の先には石で作られた白い小さなテーブルがあった。その上にはこれはまた美味しそうなホールケーキが置いてある。生クリームいっぱいで上には苺が円を描くように丁寧に並べられており、チョコスプレーやアザランなど見ても楽しいカラフルなケーキだった。
「このカラフルでかつ美味しそうなところがまた素敵だわ。」

アリスは一度友人の誕生日パーティーに招かれその時に見たケーキが着色料をふんだんに使ったエキセントリックとも言える極彩色のケーキに「見た目をカラフルにすればいいってもんじゃないわ!」と文句をつけたことがある。最終的に食べたが生クリームの味しかしなかった。

テーブルの上のケーキのクッキーのプレートをよく見ればチョコで「EAT ME!」と書いてある。

「私を…食べて?」
そのまま意訳すればそうなる。だがここでまたアリスは考え込み癖の独り言を呟いた。
「でももしこれが私以外の誰かのために作られたケーキであればその人に向けられたメッセージかもしれないわ!でもこんな所において「私を食べて!」と書いてあったらお腹を空かせた違う人が思わず食べちゃうかも…せめて名前を書いておかないと…」
「誰でもいいから私を食べてよ!」

とどこからか声が聞こえた。アリスはびっくりして身体ごと捻って森を見回すも誰も何もいない。
「ここよ!ここ!」
声の方向を向けば、ケーキだった。
ケーキがしゃべっていた。





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