淘汰の国のアリス | ナノ

「――――……!!」

ブツンと頭の中で何かが切れる音がした、同時にアリスは手繰り糸を断たれた操り人形みたいに体が崩れ力なく座り込んだ。目の前にはアリスの記憶の中で虚勢を張っていたはずのローズマリーがこっちを見て優しく微笑んでいた、首だけが。

「―ありがとう」
無意識に口から出たのは感謝の言葉だった。誰へ向けたのか。一人は自分の汚れ役を買って出た13番目のアリス。彼女がやったことは正しいことではない。だがあの夢で言った通りに彼女はアリスとなって女王を倒してくれたのだ。他には…考えようとしても、思考がまとまらない。

この気持ちはなんだかデジャヴだった。ゲームの時、気づいたら自分が誰かを殺めていたあの時だ。だが今回はまたそれとは違った。アリスはひどく落ち着いていた。チェシャ猫、おそらくローズマリーも死に際に絶望を感じていたならアリスも今のようには至らなかっただろう。体にまるで力が入らない。無音が破れた。

「…これは…!?」
城から一人、また一人と出てきた兵士が数歩駆け寄ったがそこに広がる光景を目の当たりにし立ち止まる。あちらこちらから徐々にざわめき始めた。
「女王陛下が…なんと…」
「…信じられない!」
と城の方から
「アリスが…とうとうアリスが女王を倒したぞ!」
「まさか…!」
と反対から。周りは思いそれぞれにみな同じようなことを口々にしていた。アリスにはただの雑踏にしか聞こえなかった。しばらくはその状態が続いたが、今度は城と反対の方から一人の青年がアリスを見かねて大声を張った。

「…女王アリス万歳!!」
それは意外にも海辺にいたあの臆病な青年のエヴェリンだった。例のリュックサックは留守だ。勿論、顔は笑ってないし一度そう叫んだきり何も言わなかった。
「………あ…すいませ…いやでも…あのままじゃあちょっとー…」
そのあとの沈黙と自分に一気に視線が集まり気まずく思ったエヴェリンが消え入りそうな声で呟き帽子を深く被って顔を隠した。

「女王アリス万歳!!」
「ひゃうぅ!!?」
隣にいたマーシュが倍の声で同じく叫んだ。エヴェリンは圧倒的声量(しかも隣)に心臓が跳びはねそうになった。
「女王アリス万歳!!!」
「女王アリス万歳!!!」
それを口火に次から次へと沸き上がる新しい女王を讃える歓声と、そして拍手、鳴り止まない大合唱!

「女王アリス万歳!!」
「アリス女王陛下万歳!!!」
やや遅れてから今度はなんとローズマリーに遣えていた兵士が続けて合唱を始めた。






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