淘汰の国のアリス | ナノ

「……僕と………ずっと、友達で……いて、くれるかな…」
今あるだけの力で彼女の濡れた手を握った。アリスは、必死に負けないぐらいの笑顔を作って頷いた。


「…勿論よ。私達はずっと友達だわ」
しばらくチェシャ猫は目を丸くさせた。しかし、それはほんのわずかで彼は満足げにそっと瞳を閉じた。気のせいか、綺麗すぎる顔に、頬に何かが伝ったようだった。
「……そう。…ありがとう、アリス…僕は……」

アリスもチェシャ猫がただ嬉しいから穏やかに微笑んでいるだけだと思った。違った。チェシャ猫は最後に泣いたのは、決して悲しかったからではなかった。
「………猫さん?」
アリスは急に静かになった彼の名前を呼んだ。愛称だが。
「…猫さん!?ねぇ、僕は…何?何なの?ねえ!返事してよ!!」
ふいに体を軽く揺さぶる。もう息すらしてないのを感じた。
「返事がしないなんて躾がなってないわ!わ、私のペットなんか…うっ、なま、名前を呼んだら鳴き声で…返事するおりこうさんなのよ!!」
なんでもいい、なんでもいいからとにかく彼の声を待っていた。心にもないことだとも思ったが、それでも文句でもいいからチェシャ猫はまた何かアリスに答えてくれると願ったのだが、まるで人形かぬいぐるみのように力の加わった方へ体が傾くだけの脱け殻で…。

「…チェシャ猫さん…嫌だ…こんなの嫌だ…!!嫌だああぁ!!」
もう全てが崩れたアリスはその場でチェシャ猫の動かなくなった体を抱きかかえながら我も忘れて泣き喚いた。





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